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このヴィデオインスタレーションは、アフガニスタンの戦場に放置されたコンテナの壁を逆光で撮影した一枚の写真から成り立っている。一枚の写真をもとに加工されたこの動画は一見抽象的であるため、鑑賞者はそのひとつひとつの漠然としたイメージを「星」であるとか、「砂嵐」というような「ネーミング」をして意味付けることによって理解しようと試みる。そして、画像が鮮明になるにつれてそれぞれの要素は変化し、自分がネーミングした第一印象や第二印象が数秒置きにことごとく覆されるということを体験する。この画像が最も鮮明になったときに、画面全体は広大な銀河系のような宇宙空間に似た映像が広がるが、この輝く一つ一つの星々は、カブールでの内戦により貫かれた無数の銃弾が貫通した痕である。それぞれの銃弾が目標とする先には人間がいて、それを射出するのは同じく人間である。銃弾は、人間を殺傷するという目的のために撃ち放たれる。私にはこの無数の銃弾の痕が人間の業の深さを象徴しているように見える。前線で戦う兵士たちには通常指揮権はなく、敵同士の間にある壁など、イスラムの戒律という建前にすり替えられた権力者の欲望にすぎない。当然ながら誰も自分は死にたくないし、ほんとうは人を殺したくはないのだ。どの時代においても、社会的弱者が最初の犠牲者となる。恐怖が恐怖を生み、人はその循環から抜け出せない。そして権力者は、その恐怖や不安を利用して富を得る。この連鎖が続く限り、永遠に平和は実現しない。それでもなお、この画像が宇宙空間に見える時、少なからずこの混沌とした輝きのようなものに美しさに似た感情を覚えてしまう。それでも世界は美しい。平和の実現を願いながら、その日が達成する日までそう言い続けていきたい。

恐れるその壁の向こうにも
同じ現実があるだけだというのに
エゴが嘘をつき
恐怖が恐怖を生み
また戦争がはじまる

今隣に居る人を大切に
それが過去になる前に

「偉大なる革命は一つの大きな愛を生む」と、革命家チェ・ゲバラは言った。人類愛を貫き通した若き革命家たちが崇高な理想を目指して作り上げた国、キューバ。様々な支配体制の変化を経験し、多様な文化・民族が入り交じるこの国の中で、人々は音楽によって繋がり合い、自らのアイデンティティを失わずに生きて来た。「キューバの街中には音楽が溢れている」それは、どんなことがあっても自分を見失わず、笑顔で生きる彼らの姿と重なる。夢を叶えられるとはどういうことか、理想と現実、そして希望を、彼らの音楽を通して表現しようと考え、私は"Musica Cubana"という写真集を作った。この動画は東京での作品制作作業時にキューバの空気感を感じるために制作したものである。よりよい世界を願って。

我々は知らず知らずのうちに環境に影響を受けながら生きている。美的感覚や形象感覚、または知覚の敏感性など、我々の様々な感覚がその環境に適したものとして形成され、それがその土地の独自の文化を構築するのだ。地球環境にとって太陽光が与える影響は計り知れない。それは単に物理的現象だけではなく、人々の精神性にも影響を与える。垂直すぎて強すぎたり、水平すぎて薄暗すぎる光のもとで暮らす人々の感覚はより抽象的となり、より精神的となる。対照的に斜めに適切な光のもとで暮らす人々の感覚はより具体的となり、より明快になる。このヴィデオインスタレーションはある特定の地域の壁を連続的に鑑賞することで、その地域における色彩感覚や文化を客観的に感じ、また鑑賞者のインスピレーションを喚起しつつ、我々が日常的に感じている環境を客観的に知ることを目的に制作したものだ。天候といったような自然現象すら人間がコントロール出来るようになった現代でも、自然の影響からは逃れられない。